自分の道は自分で切り開くものです
私自身のことを少しお話しします。
私の実家はある地方の温泉街にある旅館の一つで、女性ばかりのきょうだいの長女私は昔から両親より「お婿さんをとって女将として旅館を継いでもらいたい」ということを言われてきました。
小学生くらいのときにはそうした親の希望について特に疑問を持つことなく育ち、近所に住んでいた親類たちからも「若女将」のような扱いを受けていたことをよく覚えています。
しかし中学生になり思春期を迎えたときにふと「本当に自分がこの旅館を継ぐんだろうか?」という根本的な疑問を覚えるようになりました。
年齢を重ねるごとに次第に大きくなっていく「これでいいの?」という自分の中の疑問と、逆に日に日に強くなっていく両親からの期待がいつしかジレンマとなり、勉強をするということに対してのモチベーションがかなり下がってしまったこともありました。
高等学校は地元から少し離れたところにある進学校だったのですが、そこで出会った友人たちから良い意味で非常に強い刺激を受けることになりました。
その進学校は県内でも有数の学校であったこともあり、中には15歳という年齢から学校の寮や親類の家に入り親元から離れて勉強をしにきていた人もいました。
一緒に勉強をしている友人たちは行きたい大学どころかその先の自分の将来について明確な目標を持っており、「自分の将来は自分の力で切り開く」という強い意志を持っている人がたくさんいました。
そこでそれまで自分はなんと親の価値観に依存した生き方をしてきたのだろうということを痛感し、自分が本当にやりたいことは何なのだろうということを考えなおすきっかけとなりました。
今振り返ってみると旅館の女将になってみても面白い人生だったかもしれないとも思いますが、現在の自分で選んで決めた人生にはとても満足をしています。
どの瞬間からでもやり直しはできます
キャリアカウンセリングをするときに今も強く意識しているのが、「私の価値観をクライアントさんに押し付けをすることはしない」ということです。
現職に就く前に私は大学の就職課で指導をしていたのですが、その時に在学中から勉強をするモチベーションをなくし就職活動に大きく出遅れてしまっている学生さんを何度か見かけました。
その時にある学生と保護者の方を交えて行った面談が非常に印象的であり、ある意味その経験が現職を選ぶ大きな動機になったと言ってもよいほどです。
その学生さんは大学の工学部に優秀な成績で入学をされてきた男性で、入学当初のアンケートにも将来技師になりたいということを書いていました。
しかし大学3年になったあたりから授業に顔を出さなくなり、数ヶ月引きこもりに近い状態になったことから学生課と就職課が相談に乗ることになったのです。
最初は学生さんはなかなか私たちに心を開かずどうして勉強をしなくなったかという理由を告げてくれなかったのですが、粘り強い話し合いの中でついに「本当は技師ではなく料理人になりたかった」ということをぽつりと漏らしました。
親にとっては全く予想外の返答であったようですが、学生さんの意志は私達の想像以上に強く、結果的にその学生さんは大学を中退しその後調理の専門学校に進んだというふうに聞いています。
親や周囲の人にしてみれば、不安定な料理人よりも安定的な求人のある技師の方がずっと幸せな人生なのだろうと思うところでしょうが、本人はその間のジレンマに長く苦しんで来られたのでしょう。
キャリアカウンセリングにおいては決して世間的な常識や社会的立場ではなく、本人がどういった人生を希望しているのかということを見逃さないようにということを忘れないようにしたいところです。
転職で第二の人生をスタート
もう一つキャリアカウンセリングを通して心がけているのが、転職によりその人の人生を豊かにしたいということです。
以前私のもとに出産を契機に仕事をやめたという女性の方が来られたことがありました。
その方は以前まで正社員として働いていたが、今後は働き口があるんだろうかとかなり不安を感じているようでした。
女性にとっては結婚や妊娠はキャリアの中断になる重大なターニングポイントですから、自分の人生を犠牲にしなくてはならないのかという悩みを強く持ってしまったりします。
ですが仮に妊娠や出産があっても、その後以前のキャリアを生かした働き方ができる職場もたくさんあります。
自分の人生を犠牲にするのではなく、より新しい人生をスタートさせるということに積極的に転職を使ってもらいたいというのがキャリアコンサルタントとしての私の望む道です。